| 人生を取り戻す 大地と月と豊かさについて 2007年のヴィジョンとプロジェクト 2007.2 カルロ・ペトリーニ (日本語訳/石田雅芳)
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人生を取り戻す 大地と月と豊かさについて 2007年のヴィジョンとプロジェクト 1) 導入 大地と月と豊かさ 大地 テッラ・マードレ以降、私たちは、新しい現実にたちむかっていることを実感している。それは今まで扱ったものより複雑で、より検証が必要で、どのように関係して行くか、どのように具体的に対応して行くか、ということを考えなくてはならない。これは私たちが伝統的に行なって来た作業とも言える。協会も、協会が伝えるテーマも、この新しい現実に対応しなくてはならない。それができなければ、せっかくのチャンスを逃してしまい、次々洗練されてゆくような活動を展開するにもかかわらず、具体的に人々に影響を与えることができないような活動になってしまうリスクを負うだろう。 大地を取り戻そう このスローガンは2回のテッラ・マードレと、食コミュニティとの出会いによってつけられた道筋を辿ることを意味する。大地への回帰というのは、私たちが既に行なっているやり方を通して、または深い思考を通して、最も共有できる方法を見つけ出すということである。この新しい挑戦に対して、最適な組織付けをするための、さらに、制度として採用することができるような具体案やアイディアとともに、2007年11月のメキシコ国際大会を成功させたい。大地はこのようなことについて考えることを私たちに求めている。私たちの運動は、エコ・ガストロノミー運動であるから、自然が崩壊して行くのを前にして、何もしないでいることはできない。現在、学際的なガストロノミーの重要性、食べるという行為と同様、生産をするという行為の重要性、農民の労働や農村社会の保存の重要性について私たちは理解してきた。「大地を豊かにする」のは私たちである。 月について 月は私たちのユートピアに結びついた行動を表している。ポジティブで高いレベルで行なわれる運動を表している。月は私たちの文化を表す。20年の歴史によって作り上げられ、絶え間なく進化を遂げ、生産世界から、アカデミックな世界から、また都市生活からも影響を受け、毎日のように世界で形成されるような料理人たちの文化にも、門戸を開いてきた。 私たちの協会の文化は複雑で革新的だが、すべての多様性を、成長と創造と喜びの源として認識し門戸を開いてきた。私たちは文化的な小さな革命を実現しながら、喜びを社会的責務と結びつけた。この小さな革命は世界中に根付いて、様々な現実に対応し、多くの人々を動員することに成功したのである。私たちの思考の力を過小評価するべきではない。これまで成し遂げたことに対して、もっと自信を持つべきである。それによって更なる障壁を越えて行けるように。月とは何か。夢見ることに恐れをなさない ということ。何かを発明することについて、孤立しているように見えるものにも関係づけの可能性を見つけ出し、結びつけることについて恐れをなさないということ。このことは新しい考え方をその上に構築することになった、学際的な科学であるガストロノミーから学習したことである。目を吹く種、私たちを成長させてくれる種になるものは何か。それはたくさんの人によって、その知の力によって、能力によって、ライフスタイルによって支えられた、生き生きとした組織のことである。私たちは私たちの人生の結果物である。周りを取り囲んでいる自然とより調和しようとする、私たちの努力の結果物である。私たちのユートピアは、将来において現実を収穫させてくれる種であり、それこそが私たちを前進させてくれるものである。月を美しくできるのは私たちである。 豊かさについて 豊かさの概念を作り上げてしまった、世界システムまたはそれを統率する者たちを、今となっては疑いの目で見ざるを得ない、豊かさとは、過剰なこと(つまり無駄のこと)、地球や他の人に何が残されるかを考えることなしに、再生産することなしに、両手いっぱいのものをつかみあげてしまうことになってしまった。私たちの社会で理解されている「豊かさ」は、不公平、南北問題を生み出し、今まで与えてくれただけのものを、もう与えることができないような大地を生み出してしまった。 豊かさを取り戻そうというモットーは、まずその意味をフルに再構築することを意味し、それは豊かに与えることを意味する。持続性のある本当の意味で有益な関係を結ぶことで得られる、大地による豊かな恵み、私たちすべてによる、限界を見極めた上での豊かさの追求、そしてこの恵みは時にはあるものを放棄したり、共有し助け合ったり、無償の施しをすることも意味している。豊かさは農業者的な意味も持たなくてはならない。豊かな収穫、豊かな実りが私たちを本当の意味で豊かにするということである。豊かな大地から得られる適切な量の収穫という恵みのことである。豊かさとは私たちがそれを大地に再び戻すことを前提としている。それによって大地は豊かで、美味で、クリーンで正しい収穫を約束してくれる。 さらに、それは持続性という考え方と共に考えなくてはならない概念である。多くを求めてはいけない。もう食料は必要ではない。世界中に十分な量の食料は、少なくとも統計上は存在している。私たちは財産や金銭的にさらに豊かになろうとは思わない。みなが誇りを持って生きることができるだけのものを持てば良い。また、豊かさは自分が所属を運命づけられているコミュニティにおける団結の力によって和らげられるべきものである。豊かさという目標は、広範囲に渡る裕福さを表している。そう、豊かさとは皆のための裕福さを表す。大地の上で、大地とともに、私たちの生活のクオリティを高めるということである。「豊かさを取り戻そう」 2) 新しいガストロノミーとは? 拙著「おいしい、クリーン、正しい 新しいガストロノミーの規範」の中に、合衆国の2005年3月のレポートを引用した。これはMillennium Ecosystem Assetmentというものであり、世界中の1400人の科学者たちによる4年間のリサーチの結果である。地球の健康状態をモニタリングし、私たちのライフスタイルと生産活動のための、未来の可能性をデザインするというのが目的である。その結果は驚くべきものだった。今まで地球が受けたダメージの大部分が、食料生産によってもたらされているのである。このレポートを読む前は、重工業であるとか、汚染に関係づけられるすべてのことが原因と考えていたのだが、現実は違った。最も深刻なダメージは食料生産によるものである。科学者たちの理論によると、このままの方法で資源を使用し、汚染をして行けば、人類はあと300年後には滅びてしまうということになる。私たちは恐竜と同じである。地球の歴史に比べれば300年など数分の出来事にしかすぎない。カルロ・ペトリーニが明日死んでしまうのと同じである。レポートは2005年に発表されたもので、環境保護団体というタイトルのもとに環境問題というものが話されていたころで(スローフードもそれに与するのだが)、不安をかりたてるような人種であると断罪され、彼らの要望が真面目に取り上げられることも、あまりなかった頃のものである。 しかしながら、日頃見受けられるようになった気候の変化や、頻繁に報道される自然災害や、氷河の消失や、気温上昇、生活習慣を変えるための悲痛な呼びかけによって、2年の間に状況はずいぶん変わった。この文章をパリで書いている時に、気候問題についての重要な会合が行われ、いよいよ政府もこの問題を扱うことができるようになった。が、何が起こっているのかを理解するには、もっと簡単なことで足りる。1月にチョウが飛んでいるではないか!ヒナギクが野原に咲いているではないか! 私たちはガストロノミー愛好家として知られ、その結果としてエコ・ガストロノミーを信奉してきた。環境問題はとうの昔から私たちの関心事だったからである。また私たちは告発することだけが活動ではないということを学習している。私たちがいままで実現して来たものは、小さいながらも重要な意味を持ったものであった。絶滅の危機に遭っている生産物を守るためのプレジディオ計画、生物多様性のための基金、テッラ・マードレ…。このラインをたどりながら具体的な答えを出せるようにして行かなくてはならない。プラグマティズムに即しながらガストロノミーを再定義することを要求される。それは新しい科学であり、食をその万華鏡のようなすべての局面から考察し、将来を約束してくれる1つの鍵を取り出す。その鍵は私たちの宇宙船「地球」に対して行なわれて来た戦いを、がらりと変えてしまうようなものである。食と技術システム、経済、社会、文化システムが私たちの星の健康を脅かしている主要な原因である。私たちガストロノミー愛好家は実現可能な解決策を見つけるために、熟考し、学習し、発明し、ネットワークを作らなくてはならない。食と食品生産と、持続性、消費スタイルという関係性について先取りして、理解することができたのは、私たちのような少数のものたちである。喜びを理解し評価することに神経を使うという行為は、世界に対しても目を開かせてくれた。良い食材を守るという指標のために、私たちは具体的な活動をすることを学習した。ガストロノミーは民俗学でも大食でもなく、再定義と再主張を必要としている科学であるということを、私たちは最初に理解したのである。まさに、このような原則に立脚した食科学大学の設立は、偶然ではない。より繁栄を約束された幸せな社会のために、食が中心的な存在になるべきであると言ったのは、私たちが最初なのである。 |
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